ぼんち (1960)

週刊新潮に連載された山崎豊子の原作を、和田夏十と市川崑が共同で脚色、市川崑が監督したもので、大阪船場のぼんちという宿命を負った一人の青年の半生が描かれる。宮川一夫が撮影した。

監督:市川崑
出演:市川雷蔵 若尾文子 中村玉緒 草笛光子 越路吹雪 山田五十鈴 毛利菊枝 京マチ子 船越英二 林成年 倉田マユミ 北林谷栄 中村鴈治郎

ぼんち (1960) のストーリー

昭和35年、かつての情緒を失いモダンでエネルギッシュな街に変貌した大阪。船場はもう無い。運送会社勤めの太郎の家に住む喜久治(市川雷蔵)、57歳。喜久治は下手な落語家の春団子(中村鴈治郎)相手に放蕩の半生を語る。

喜久治は、船場に四代続く足袋問屋河内屋のぼんぼん。河内屋は、父・喜兵衛(船越英二)もその先代も養子婿の女系家族であり、祖母のきの(毛利菊枝)と母の勢以(山田五十鈴)がしきたりを固守し家内を牛耳っている。昭和2年、喜久治22歳。女遊びにふけっていた喜久治は、きの等が決めるままに弘子(中村珠緒)と結婚。久次郎が産まれるが、弘子はしきたりに背き実家で子を産んだと離縁される。昭和5年、喜兵衛が肺病で死に五代目を襲名。結婚はこりごりと商いと花街通いに励み、芸者のぽん太(若尾文子)と仲居の幾子(草笛光子)を囲い、ぽん太は太郎を産む。妾や妾の子への手当もしきたり通りである。
昭和8年、満州事変で世の中は不景気。喜久治は流行のカフェの女給・比沙子(越路吹雪)とつき合い、幾子が幾郎を産んで亡くなり悲しむが、妾の死に駆けつけることは許されず、お福(京マチ子)に慰められる。きのはかねがね、このお福に女の子を産ませ間違いのない養子婿をつけようと目を付けていた。寝物語に、お福から実は子の出来ない体と聞かされ喜久治は愉快である。
昭和19年、空襲で河内屋は蔵を残して焼失。茫然自失の喜久治を頼り、ぽん太と比沙子とお福、疎開先からきのと勢以と女中もやって来る。喜久治は、店を立て直そうと、女たちに有り金を六等分にして渡し菩提寺に行かせるが、きのが川に落ちて死に勢以と女中は船場に残る。一年後に寺を訪ねると、三人の女は、喜久治のことなど気にかけずそれぞれの夢を語らいながら楽しく風呂に浸かっていた。喜久治は放蕩の終わりを感じて嬉しかった。

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